確証バイアスを利用した天瀬ひみかの「予言」トリック
大きな事件や災害がある度に便乗するため、Twitterで局所的に話題となる天瀬ひみかの「予言」。
彼女の「予言」の仕組みは、人間が持つ確証バイアスを利用したものです。
【天瀬ひみかの予言の仕組み】
(2022年1月15日の事例から)
①天瀬ひみかが約4ヶ月前に2022年1月15日のコードを投稿
2022年1月15日(±1日 最強力等作用)
日付日運コード25/コード115
コード96-コード97
コード156-コード157
コード168-コード169
2022年1月15日(太陽±1日等作用 1月14日〜1月16日 月±2日等作用 1月13日〜1月17日)の天球図の日運は
【ライツ】※最大注意!
太陽がコード294−コード295
月がコード77−コード78
です。
このように、1日に12個ものコード(25/115/96/97/156/157/168/169/294/295/77/78)を提示しています。
さらに、時差の影響で±1日のコードにも影響されるという論理や、「前後10日最強作用」という論理など、複数の論理があり、注意すべきコードは上に挙げた12個に限らず、かなりの幅があります。
②2022年1月15日に、天瀬ひみか本人やサポーターらがコードの的中を報告
この日は、東京大学で高2の少年が共通テストの受験生の3名を刺傷する事件がメディアで大きく取り上げられました。
この事件に対する予言として、天瀬ひみか本人は以下の根拠を示しています。
コード95(同期コード93コード94)「入試、受験生、受験関係者に犯罪被害、死の危険」
コード96「上京した若者が犯罪史に残る凶悪犯罪を犯す」
コード115「刃物による襲撃」
コード96『親の無い子のように育った若者が、人生の数奇な旅の果てに、世間並みの人々をあっと驚かせる、史上に残るどでかいことを成し遂げ(どえらいことをやらかし)、とうとう一角の人物として世間に名が知られるようになる』(「Son of a gun」ならず者、犯罪者、凶悪犯罪者、鉄砲玉、ヒットマン)
ルナーコード96「汽車(電車)に乗り、遠く故郷を後にした若き青年が、人生の様々な学びと試練を経た長い年月の数奇な旅程の果てに、世間並みの人々をあっと驚かせる、史上に残るどでかいことを成し遂げ(または、どえらいことをやらかし)、とうとう一角の人物として満天下に名が知られるようになる」
♢コードの現象化形態:苦い体験や辛い体験をする。人生上の紆余曲折の体験。波乱のある生活。故郷を捨てる。上京する。(格式が非常に良ければ)新天地でチャンスを掴み、立身出世を遂げる可能性。(格式が良ければ)試練や紆余曲折の後の成功。(格式が良ければ)試練や紆余曲折の後の社会的認知。
(格式が悪ければ、犯罪を犯したり、または逆に犯罪被害に遭ったり、大事故に関わったりなど)悪い意味で有名になる。(ときに)転居や移住(あるいはその計画や準備に関すること)。
コードの膨大な情報の中から、以上の部分がこの事件を示しているとして、的中としています。
【天瀬ひみかの予言を批判的に読み解く】
①「コード96」は本当に的中しているのか?
天瀬ひみか本人やそのサポーターは、コード96は東大刺傷事件を的中させたとしているが、本当に的中しているのだろうか?
実際の事件と合っている部分を太字、合っていない部分を赤字、補足を【黄字】とで書き分ける。
コード96『親の無い子のように育った【犯人には両親がいる】若者が、人生の数奇な旅【愛知から東京への単なる移動であり、「人生の数奇な旅」とするかは判断が分かれる】の果てに、世間並みの人々をあっと驚かせる【ニュースになるようなことは世間の人々が驚くようなこと】、史上に残るどでかいことを成し遂げ(どえらいことをやらかし)、とうとう一角の人物として世間に名が知られるようになる』【少年犯罪なので世間に名前は知られていない】(「Son of a gun」ならず者、犯罪者、凶悪犯罪者【凶悪かは判断が分かれる】、鉄砲玉、ヒットマン【暗殺者でも殺人者でもない】)
ルナーコード96「汽車(電車)【犯人が乗ったのは夜行バス】に乗り、遠く故郷を後にした若き青年が、人生の様々な学びと試練を経た長い年月の数奇な旅程【犯人の人生に受験勉強や、試練があったことは推察されるが、それは「長い年月の旅程」での出来事はない】の果てに…〈以下、上と同文であるため省略〉
♢コードの現象化形態:苦い体験や辛い体験をする。人生上の紆余曲折の体験。波乱のある生活。故郷を捨てる【以上は、犯人本人しか感じられない主観の問題であるため、判断しかねる】。上京する。(格式が非常に良ければ)新天地でチャンスを掴み、立身出世を遂げる可能性。(格式が良ければ)試練や紆余曲折の後の成功。(格式が良ければ)試練や紆余曲折の後の社会的認知。
(格式が悪ければ、犯罪を犯したり、または逆に犯罪被害に遭ったり【犯人は犯罪被害に遭っていない】、大事故に関わったり【事故ではない】など)悪い意味で有名になる【未成年であるため実名報道されないため有名にはなっていない】。(ときに)転居や移住(あるいはその計画や準備に関すること)。
このような長文にも関わらず、【若者が上京し犯罪を犯した】という情報しか当たっていないことがわかる。
犯人が高校2年生であること、医者志望であったこと、被害者が3人だったこと、現場が東京大学であったことなどには言及されていない。
また、汽車で上京、親が無い子のように育ったなど、実際の事件や犯人とは異なっている情報が多く、コード96が事件のことを詳細に当てているとは言えない。
しかし、人間には確証バイアスという、自分にとって都合の良い情報だけを集め、都合の悪い情報を集めない傾向がある。
「天瀬ひみかの予言は当たっている」という先入観や仮説があると、当たっている情報(太字の部分)だけを支持し、当たってない情報(赤字の部分や予言には書かれていない事)は無視してしまうということである。
天瀬ひみかは、この確証バイアスを利用して、コードと呼ばれる膨大な情報の中から部分的に該当している部分を取り上げ、あたかも自分が事件を予期していたのように装っているということである。
②コードの汎用性が高すぎる
「コード96」が東大刺傷事件を詳細に当てることができなかった一方で、その汎用性は高く、今回の事件以外でも、以下のような抽象的な事件や出来事に対して「コード96」が当てはまる。
【地方出身のアスリートが東京大会で金メダルを取った】
【R1で大阪出身の新人芸人がファイナリストになった】
【東南アジア出身の技能実習生が貧窮の末、強盗で捕まった】
さらに、上に挙げたのはコード96が意味するもののごく一部で、コード96には以下のような意味も含まれると言う。
宮城地震、バンクシーの新作出現、アリババを襲う不安凶事、スター•ウォーズ、エジプト、火球…など(なお、いずれも2022年1月15日に関連するニュースはなかった。)
このように、地震、経済、エンタメ、国際情勢、天文現象などニュースになりそうなあらゆる膨大なキーワードをコードの意味とすることで、その内の「なにか」が当たっている状態を作り出しているといえる。
さらに、コード96では説明できなかった事象を、同日の他のコードで補うことで、事件を詳細に説明している。
つまり、一つのコードに抽象的で汎用性のある意味を膨大に含ませ、それで説明できなかった場合は、同じく膨大な意味を含む他のコードで意味を補うというシステムで、世界で起こる森羅万象を説明することを試みている。
③トリックを見破られないためのトリック
天瀬ひみかは、抽象的で汎用性の高いキーワードや文書をあらかじめ羅列しておき、該当する日の時事ニュースのうち、部分的に該当している箇所を予言として取り上げる。
それを、受け手は確証バイアスによって、「当たっている」と感じてしまうというトリックである。
天瀬ひみかは、このトリックを見破られないようにするための工夫も凝らしている。
まず、360種に及ぶコードの膨大な意味を公式ホームページや書籍などにおいて、わかりやすい形で公開しないという工夫である。(なお、本人は、悪用を防ぐためとしている。)
このコードはこの意味だ!とわかりやすくまとめてあれば、予言が当たっていることを立証することが容易になる一方で、予言が当たっていないことを立証することも容易になってしまう。
そのため、コードの意味は天瀬ひみか本人がTwitterで不定期につぶやくものや、ホームページに不定期に書くもの、それをサポーターと呼ばれる人物がまとめたものや、サポーターが独自解釈したものなど、各サイトのバラバラのアカウントに散在しており、情報を集めにくい。
この情報の多さと集めにくさが、天瀬ひみかの予言の立証と反証を忌避させる。
さらに、コードのシステムを難解で複雑そうに見せることによって、それを完全に理解し取り扱う天瀬ひみかのカリスマ性を演出している。
そして、天瀬ひみかは時事ニュースだけに言及して、個人の悩みや将来に言及しない点で、占い師とは異なる。
時事ニュースは、世の中の情勢を見れば予期できるところがあり、数を打てば当たるが、個人の悩みや将来については予期しにくく、外れるリスクが大きい。
このように、個人の仕事や恋愛、金運などには言及せず、比較的当てやすい時事ニュースのみを予言の対象とすることで、占い師と差別化を図りながら、的中率を高く見せている側面がある。
【天瀬ひみかになってみた!】
こんなに膨大なコードとその意味があれば、自分も無理やり意味をこじつけて、事件の説明ができるのではないかと考えました。
コードの知識はないため、1から360の乱数発生ででてきた12個の数字のコードの中から、東大刺傷事件の説明を試みました。
263/258/51/289/251/50/28/327/280/262/323/253
コード51
♢コードの現象化形態:環境からの強いプレッシャー。強い外圧を受け、立場を破壊される。(格式が良ければ)自己の目標の徹底追及。自己の理想に従って方向転換する。予定通りに(順風満帆に)いかない状況。理不尽な権力や支配への反抗。生存のための戦い。(格式が非常に悪ければ)暴力や破壊。
犯人は受験勉強という強いプレッシャーを受け、成績が思い悩み、暴力的•破壊的な行為に走ってしまった。
コード251
「火災」「放火」
犯人は駅でぼや騒ぎも起こしている。
このように、事件のある側面を切り取って、いくらでもこじつけることが可能なのである。